※この記事は過去に「週間住宅新聞」へ寄稿したものになります。
投資総額1億800万円(内諸経費800万円)でNOI(営業純利益)756万円の事業用不動産を全額自己資本にて取得した場合、金融機関に対する返済額(ADS)がないため、NOI=BTCF(税引前キャッシュフロー)となる。
一般的な個人投資家の場合、通常は資金調達を行い、それほどの自己資本を用意できなくても少ない資本で多額の事業用不動産を取得することができるよう、レバレッジを掛けてCCR(自己資本運用利回り)の向上を目指すようになる。仮にA銀行から9000万円の資金調達を金利2%の返済期間22年で行ったとすると、ADS(年間借入返済額)は506万円。となると、NOI756万円-ADS506万円=BTCF250万円となるわけだ。ただ、あくまでもBTCF250万円であって、ここから税金が控除されることを忘れてはいけない。
ここで控除される税金は、「NOI-借入利息-減価償却費用-青色申告特別控除(個人・届出要)」といった流れで求められる。仮に本物件が10世帯のIRC棟マンションであり、1995年築(築18年)の建物価格4000万円・土地価格6000万円(合計価格1億円)の場合、減価償却期間は法廷耐用年数の関係で32年となるため、年間の減価償却費用は125万円(4000万円÷32年)となる。すると、「NOI756万円-借入利息177万円-減価償却費用125万円-青色申告特別控除65万円(事業的規模・届出済)」によって、不動産所得の課税対象は389万円となり、実効税率が30%であれば116.7万円が税金としてBTCFから控除されATCF(税引後キャッシュフロー)は133.3万円(BTCF250万円-税金116.7万円)となるわけだ。
ところが、例えばB銀行の資金調達条件が金利4.5%で返済期間が30年だったらどうなるであろうか。借入金額9000万円に対して金利4.5%の返済期間だとADSは547万円、つまりNOI756万円-ADS547万円=BTCF209万円と、先ほどのA銀行の資金調達条件(金利2%・返済期間22年)とのBTCFの差額はマイナス41万円(250万円-209万円)となるわけだ。
ではATCFの差額はどうなるであおうか。A銀行およびB銀行それぞれ資金調達の条件が違うため、経費計上できる「借入金利息の額」が異なってくることに注目したい。
「NOI756万円-借入利息402万円-減価償却費用125万円-青色申告特別控除65万円(事業的規模・届出済)」によって、不動産所得の課税対象は164万円であり、実行税率が30%のため49.2万円が税金となる。結果的にATCFは159.8万円(BTCF209万円-税金49.2万円)となり、これらの条件で想定した場合、A銀行で資金調達した場合よりB銀行で資金調達した方が初年度はATCFが厚くなることが分かる。つまり、資金調達の条件によってはBTCFとATCFの優劣が逆転するということもありえるということを投資家には把握していただく必要がある。
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