金融機関の物件評価基準

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※この記事は過去に「週間住宅新聞」へ寄稿したものになります。

「支店に保管されていた取引業者名簿を見て訪問させてもらいました」とは、某地方銀行の営業担当者。飛び込みでやって来た営業担当者とはいえ、せっかくの情報交換の場だ。時間があったため、話をさせてもらうことにした。

聞けば、今年度より個人向けのアパートローン融資に積極的に取り組むべく、都心の支店に専門部署を新設した旨のあいさつだった。

この金融機関には5~6年前まで一般の個人向けアパートローンにも積極的に取り組んでもらっていたものの、それ以降は主に資産家向けにシフトしていたため、最近は取引は途絶えていた。それが再度個人向けに力を入れだしてきたことからも、最近の不動産融資に対する潮目の変化を感じさせられる。

ただこの金融機関の不動産に対する融資は、前面道路の路線価と構造ごとの建築標準単価を基に物件評価を行う「積算評価」を重視するスタンスである。早い話が土地が狭いと担保評価が出づらくなる傾向がある。

地方と比較すると都心は地価が高い。したがって、投資コストを考えると狭い土地をタテに活用して高い建物を建築することが多くなり、そうなると借入可能額は思うように伸びずに土地を購入する際の自己資金比率が高くなってしまうのだ。

「今回からは違う」と営業担当者からアレコレ説明を受けてはみたものの、机上で説明を受けるよりは実際に案件を持ち込んでみるのが一番手っ取り早い。というわけで、都内の木造3階建て新築アパートの融資を打診してみた。

結果としては、LTV70%(ローン÷物件価格)の物件評価となり、想定を上回る自己資金が必要となったため取り組みは難しいということになった。やはり具体的な案件を相談してみないと見えてこないことは多いものだ。

このように、顧客に物件を紹介する前には金融機関の物件評価を確認するが、こちら側でもある程度は金融機関側の物件評価の方法を把握しておかなければならない。そうしないと本当に進めたい案件があるときに時間のロスにつながってしまい、投資にスピード感が欠けてしまうのだ。

物件の評価基準は大きく分けて、物件が稼ぎ出せる賃料をもとに収益力から逆算する「収益還元評価」と、前面道路の路線価や構造ごとの建築標準単価に基づいた「積算評価」に分けられる。しかも、そのそれぞれに、金融機関ごとで細かくアレンジが加わったりしていることがほとんどである。

だからこそ、可能な限りの金融機関ごとの評価方法を把握しておく必要があり、「想定の資金計画で購入可能か」という自分の判断精度を高めておかなければならない。

そうした取り組みが結局は金融機関に対して行うムダな相談案件を減らし、お互いに時間のロスをなくすことになる。そして、スピーディーに優良物件をおさえられることへつながるわけだ。

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